小説『海風』第4話
歩き始めてから気づけば3日が経った。 山道を歩く。夏場でも立ち止まっていれば涼しい道だ。でも、歩く僕らの背中にはじんわりと汗がにじんでいた。 「なんでこんな、何の当てもない旅について来ようと思ったの?」 「なんでって…わ…
歩き始めてから気づけば3日が経った。 山道を歩く。夏場でも立ち止まっていれば涼しい道だ。でも、歩く僕らの背中にはじんわりと汗がにじんでいた。 「なんでこんな、何の当てもない旅について来ようと思ったの?」 「なんでって…わ…
「きたきたきた!太陽!」 彼は楽しそうにはしゃぐ。僕は眩しいなと思いながらも、山の間から光を届けるあの星から目をそらすことはできなかった。 「旅の始まりにふさわしいだろ?」 「うん。」 僕はベンチに腰を下ろす。正直に言っ…
ピンポーン … ピンポーン …誰だ。というか今は何時だ? スマホの画面を見る。時間は朝の4時半だ。 ヴゥウウウウウウウ 画面を見ると同時にバイブ音が鳴る。電話だ。無視して眠りたいのはやまやまだが、仕方なく出てみる。 「お…
風を浴びたい。海風を。 僕は命を取り戻すだろう。 僕の重荷もきれいに、風と共に去ってくれるだろう。 海に沈んで。波にのまれて。太陽に届きそうな気がして。 最後はどこに行きつくでもなくただ海風として。 「君を愛していないん…